経営戦略の考え方(6)成長戦略の補足②多角化戦略4つのパターン
前回は多角化戦略のシナジー効果についてお伝えしました。イメージをつかんで頂きたいので念のため前回でも使用した図を下記に記載しておきます。
今回は上の図の右下、多角化戦略のパターンについてお伝えします。多角化戦略は市場と製品分野により、下記4つのパターンにわかれます。
①水平的多角化
②垂直的多角化
③集中的多角化
④集成的多角化
このパターンを知ることで自社が多角化戦略に打って出る際のヒントになると思います。ではひとつずつ見ていきましょう。
①水平的多角化
既存市場と同じタイプの顧客を対象に新たな事業(既存事業と類似した商品・サービス)を展開していきます。テレビメーカーがビデオメーカーとして多角化するというようなイメージです。販売シナジー効果が期待でき、比較的成功率も高いですが、既存の商品・サービスと市場が同じため、大きな成長性・収益性を望むことができません。次の大黒柱を構築するまでの短・中期的な多角化戦略と言えます。
②垂直的多角化
商品・サービスは既存のものですが、製造から販売までの諸段階において事業を展開していくことです。(川上・川下への進出)メーカーの場合、原料調達のような川上に向って統合することを後方垂直統合、逆に卸・小売など川下に向って統合することを前方垂直統合と言います。現在、自社が存在する市場を拡大し、安定的な需要を確保することが出来る反面、今の市場に依存することになるので長期的な視点で考えるとリスク面で課題が残る多角化となります。
③集中的多角化
既存商品・サービスの技術や販売網などに経営資源を集中的に投下することで新しい事業に進出することです。シナジー(販売シナジー、生産シナジー)を発揮することが可能で、リスクが比較的少なく利益が安定する多角化です。最近ではホームページで成功を収めた企業が、業種の異なるサイトをいくつか立ち上げ、全く違った商品を販売していることが見受けられます。
④集成的多角化(コングロマリット型)
既存の商品やサービス、市場において全く関連のない、成長性の高い分野で事業を展開していくことです。シナジー効果が見込めないのでリスクの高い多角化となりますが、その反面見返りは大きくなります。また企業全体としてのリスク分散という視点から考えると、一番多角化らしい多角化と言えるのではないでしょうか。
2回にわたって成長戦略における多角化戦略についてお伝えしてきましたが、中小企業の場合、多角化は最後の選択です。「金の成る木」である事業があれば、多角化に打って出ても良いのですが「今の事業より新たな事業の方が良さそうだから・・・」というような考えでは絶対にうまくいきません。経営の原則は資源を集中することです。(ランチェスター戦略、弱者の5大戦法のひとつ「一点集中主義」です)そもそも中小企業の多角化は資源を分散させるということを認識してください。
成長戦略の解説で少し時間がかかってしまいましたが、次回は競争戦略についてお伝えします。