経営戦略の考え方(12)アドバンテージマトリクスと業界の事業タイプ
前回まで、競争戦略の第一人者、
マイケル・ポーター氏が提唱したファイブフォース分析で
5つの競争要因から業界の構造を知る方法をお伝えしてきました。
5つの競争要因は覚えていらっしゃいますか?
見飽きたかと思いますが、
念のため最後にもう一度例の図解を掲載しておきます。
そもそも、
何のために業界構造を知る必要があったのかと言うと、
競争優位性を構築するためでした。
この競争優位性を構築するためには、
自社が属する業界がどのような事業のタイプなのか
を知っておく必要があります。
そのためのフレームワークがアドバンテージ・マトリクスです。
下の図を見てください。
上の図のように、
競争上の戦略変数が多いか少ないか
という軸と、
競争優位性の可能性が高いか低いか
という2つの軸で事業のタイプを4つに分けます。
それぞれの事業のタイプで成功の可能性が異なってくるので
事業によってどのような優位性を構築できるか
を考えなければなりません。
以下に4つの事業のタイプを解説していきます。
●特化型事業
競争上の戦略変数が多く、
優位性構築の可能性が高い事業です。
戦略変数が多いということは
競争要因が多く存在するということです。
そして、
差別化や集中化によって
特定の分野で独自のポジションを構築することで
競争優位性を保っていくことのできる事業です。
●規模型事業
競争上の戦略変数が少なく、
優位性構築の可能性が高い事業です。
競争要因が規模(シェア)しかなく、
規模が大きい企業ほど高収益となります。
製品に差別化できる要素がほとんどなく、
開発面、生産面、マーケティング面などで
規模が効く場合にこの傾向が顕著になります。
●分散型事業
競争上の戦略変数が多く、
優位性構築の可能性が低い事業です。
事実上、大企業が存在しない業界で、
小売業、飲食業、士業など…
企業というより個人事業主の延長線上にあるイメージです。
“多数乱戦業界”と言われています。
このような業界では、
現場スタッフの資質が成功を左右することが多く、
企業全体としての優位性確立は困難となります。
●手詰り型事業
競争上の戦略変数が少なく、
優位性構築の可能性も低い事業です。
中小企業は大企業に淘汰され、
残った大企業も優位性構築が困難な事業です。
自社の事業がこの事業パターンに属しているのであれば、
撤退か他の比率を上げるか、
もしくは、
M&Aで川上・川下戦略に出て付加価値を上げる
ことをしなければなりません。
このように、
事業のパターンを分けて考えると
自社がどの事業パターンに属し、
どのように競争優位性を構築しなければならないか
がわかります。
これらのことを踏まえて、
次回はポーターの3つの基本戦略をお伝えします。