【BEP事例①】10%の値下げは10%の数量アップでは補えない!?
今回は前回お伝えした【損益分岐点売上高】の算出について、
具体的な事例を上げて考えてみたいと思います。
復習も兼ねて下記の式を確認しておいてください。
◆売上高ー変動費=固定費+利益=限界利益
◆損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
※限界利益率=限界利益÷売上高
※変動費率(変動費÷売上高)=1-限界利益率
◆目標売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率
そして、
下記のような財務データの製品Xがあったと仮定してください。
【製品Xの財務データ】
単価:@1,000
変動費:@600
数量:1,500個
売上高:¥1,500,000
変動費:¥900,000
限界利益:¥600,000
固定費:¥450,000
営業利益:¥150,000
上記の条件で売価を10%値下げして@900にしたとします。
この時・・・
「値下げ前の利益を確保するには販売数量をどの程度上げれば良いでしょう?」
・・・というのが前回の質問でした。
多くの経営者の方が
「10%値下げしたんだから、数量は10%増えれば良いのでは?」
とお答えになります。
1,500個+150個=1,650個という回答ですが、そうではありません。
正解は500個増やして2,000個、
1.3倍弱以上売らなければ同じ利益を確保することができないんです。
ここでは2つの間違いが生じているのですが、どういうことか説明しましょう。
ひとつは単純な掛け算の間違いです。
元の売価:@1,000×1,500個=¥1,500,000
値引の後:@900×1,650個=¥1,485,000
ここで申し上げたいのは0.9×1.1=0.99で「1」にはならないということです。
上記では10%の値下げで計算しましたが、これが30%の値下げだった場合・・・
@700×1,950=¥1,365,000 0.7×1.3=0.91
・・・となり「0.09」も誤差が生じて差が開いてしまいます。
これらのことから“値下げは同率の販売増で補うことができない”ことがわかります。
そしてもうひとつの間違いは売上に気を取られてしまい変動費の存在を忘れてしまったことです。
売価を下げて数量を上げることで売上が以前と同じ水準になったとしても、数量の増加分に関しては新たに変動費が発生しているのです。同じ利益(15万円)を確保するには、この変動費を賄うための売上が必要になるのです。
売価が10%下がるということは売上に占める変動費率が60%(変動費@600÷売価@1,000)から約67%(変動費@600×÷売価@900)に変わります。この時に必要な売上高を算出するのに上記の公式、
「目標売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率」
…を使います。
目標売上高(必要売上高) =(45+15)÷(1-67%) =180.18・・・
※限界利益率=1-変動費率 180万÷150万で1.2倍の売上、
180万÷@900=2,000個で1.3倍弱の販売数量
・・・が必要なことがわかります。
仮に製品Xを20%値下げした場合には・・・
売上は240万円(1.6倍) 販売数量は3,000個(2倍)
・・・が必要となります。
では逆に10%の値上げをした場合、どの位の販売数量が減っても同じ利益になるでしょう?
これを読まれた方は150個(1,500個の10%)という回答はしないですよね?(笑)
正解は次回でお伝えします。